Product Thinking

ユーザーの声を聞きすぎると、迷子になる

「ユーザーファースト」

多くの人がこの言葉を口にする。ユーザーの声を聞け。ユーザーの要望に応えろ。ユーザーを第一に考えろ。

でも、ユーザーは何が欲しいか分かっていない。

ユーザーインタビューの罠

ある日、ユーザーインタビューをした。

「どんな機能が欲しいですか?」

ユーザーは、たくさんのアイデアを出してくれた。

「検索機能が欲しい」「フィルター機能が必要だ」「CSVエクスポートができたら便利」

すべてメモを取った。そして、その機能を作った。

結果、どうなったか?誰も使わなかった。

ヘンリー・フォードの言葉

ヘンリー・フォードは、こう言った。

「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」

顧客は、自動車が欲しいとは言わなかった。なぜなら、自動車を知らなかったから。

ユーザーは、現状の延長でしか考えられない。

聞くべきは「声」ではなく「行動」

ユーザーインタビューで、こんなことがよくある。

「この機能、使いますか?」
「はい、絶対使います!」

でも、リリースしても使わない。

なぜか?ユーザーは、自分が何を欲しいか分かっていないからだ。

聞くべきは、「声」ではなく「行動」だ。

ユーザーが何を言うかではなく、ユーザーが何をするかを見る。

Instagramの例

Instagramの前身、Burbnは位置情報共有アプリだった。チェックイン機能、コメント機能、写真共有機能、すべてが詰まっていた。

でも、ユーザーはほとんど写真共有機能しか使わなかった。

創業者は、ユーザーの「声」ではなく「行動」を見た。そして、写真共有機能以外をすべて削った。

それが、Instagramになった。

ユーザーは「写真だけのアプリが欲しい」とは言わなかった。でも、行動がそれを示していた。

問題を聞け、解決策を聞くな

ユーザーに聞くべきは、問題だ。解決策ではない。

悪い質問: 「どんな機能が欲しいですか?」
良い質問: 「どんな問題で困っていますか?」

ユーザーは、問題の専門家だ。でも、解決策の専門家ではない。

問題を理解したら、解決策は自分で考える。

ユーザーの声に振り回される

ユーザーの声を聞きすぎると、こうなる。

Aさんが「この機能が欲しい」と言う。作る。
Bさんが「別の機能が欲しい」と言う。作る。
Cさんが「もっと別の機能が欲しい」と言う。作る。

気づけば、誰も満足していない複雑なプロダクトができあがる。

Appleは、ユーザーの声を聞かない

Steve Jobsは、こう言った。

「我々の仕事は、人々が何を欲しいか理解する前に、彼らが何を欲しいかを理解することだ。」

iPhoneが出た時、誰も「物理キーボードのないスマホが欲しい」とは言わなかった。むしろ、「キーボードは必要だ」と言っていた。

でも、Appleは作らなかった。なぜなら、本質が見えていたから。

ビジョンを持て

ユーザーの声を聞くことは大事だ。でも、それがすべてではない。

もっと大事なのは、ビジョンを持つことだ。

このプロダクトで、どんな未来を作りたいのか。どんな問題を解決したいのか。

ビジョンが明確なら、ユーザーの声に振り回されない。

バランスが大事

ユーザーの声を完全に無視しろとは言わない。

でも、盲目的に従うな。

ユーザーの「行動」を観察しろ。
ユーザーの「問題」を理解しろ。
そして、自分のビジョンと照らし合わせて、判断しろ。

ユーザーファーストではなく、問題ファーストであれ。

迷子にならないために

ユーザーの声を聞きすぎて迷子にならないために、こうしよう。

問題を聞く。 「何に困っていますか?」「どんな時に不便ですか?」

行動を見る。 ユーザーが実際に何をしているか、データで見る。

パターンを探す。 一人の声ではなく、多くの人に共通するパターンを探す。

ビジョンと照らす。 そのパターンは、自分のビジョンと合致しているか?

小さく試す。 いきなり大きく作らず、小さく試してフィードバックを得る。


ユーザーの声を聞くことは大事だ。でも、聞きすぎると迷子になる。

聞くべきは「声」ではなく「行動」。聞くべきは「解決策」ではなく「問題」。

そして、ビジョンを持て。ユーザーの声に振り回されるな。


このような考え方で、事業開発やプロダクトづくりを支援しています。
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