機能を追加するのは、簡単だ。
「ユーザーが欲しいって言ってる」「競合が持ってる」「あったら便利そう」
そんな理由で、機能は増え続ける。
でも、機能を作らないと決めるのは難しい。なぜなら、削ることは決断することだから。
機能追加のプレッシャー
プロダクトマネージャーをやっていると、毎日のように機能リクエストが来る。
「検索機能が欲しい」「エクスポート機能が必要だ」「ダークモードを追加してほしい」
すべて、もっともな要望に聞こえる。でも、すべてを作ると、プロダクトは肥大化する。
ある日、私はこう聞かれた。
「なぜ、この機能を作らないんですか?技術的には簡単ですよ。」
私はこう答えた。
「作れるからといって、作るべきとは限らない。」
作らない理由
機能を作らない理由は、いくつもある。
複雑さが増す。 機能が1つ増えると、複雑さは2倍になる。機能同士の組み合わせ、エッジケース、バグの可能性。すべてが指数関数的に増える。
メンテナンスコストがかかる。 作った機能は、永遠にメンテナンスし続けなければならない。新しい機能を作るたびに、古い機能のメンテナンスコストが積み上がる。
ユーザーを混乱させる。 機能が多すぎると、何をすればいいか分からなくなる。シンプルなプロダクトは、誰でも使える。複雑なプロダクトは、誰も使いこなせない。
本質がぼやける。 このプロダクトは、何のためにあるのか?機能が増えるほど、答えにくくなる。
Basecampの哲学
Basecampの創業者、Jason Friedは言う。
「私たちが誇りに思っているのは、作ったものではなく、作らなかったものだ。」
Basecampは、プロジェクト管理ツールだ。でも、ガントチャート機能はない。タイムトラッキング機能もない。高度なレポート機能もない。
「なぜ作らないんですか?」と聞かれる。
答えは、シンプルだ。「必要ないから。」
本質は、チームのコミュニケーションを円滑にすることだ。それ以外の機能は、作らない。
「あったら便利」の罠
「あったら便利」は、悪魔のささやきだ。
確かに便利かもしれない。でも、本質ではない。
「あったら便利」を全部作ると、誰にとっても中途半端なプロダクトができあがる。
むしろ、「これがないと使えない」という人を切り捨てる勇気を持つべきだ。
すべての人のためのプロダクトは、誰のためのプロダクトでもない。
Noと言う勇気
機能リクエストに、Noと言うのは難しい。
ユーザーを失望させるかもしれない。チームメンバーを失望させるかもしれない。上司を失望させるかもしれない。
でも、Noと言えることが、最も重要なスキルだ。
Steve Jobsは言った。
「イノベーションは、1000のことにNoと言うことだ。」
やることを決めるのは簡単だ。やらないことを決めるのが難しい。
作らないことのメリット
作らないと決めることで、何が得られるか?
スピードが上がる。 作る機能が少ないから、速く作れる。速く作れるから、速く学べる。
品質が上がる。 少ない機能に集中できるから、質が高くなる。
本質が明確になる。 何のためのプロダクトなのか、誰が見ても分かる。
メンテナンスが楽になる。 機能が少ないから、壊れにくい。壊れても、直しやすい。
判断基準
では、どうやって作る・作らないを判断するのか?
本質に近いか? このプロダクトの本質は何か?その本質に近い機能なら作る。遠いなら作らない。
多くの人が毎日使うか? 一部の人が時々使う機能は、作らない。多くの人が毎日使う機能だけを作る。
シンプルさを保てるか? この機能を追加しても、シンプルさを保てるか?複雑になるなら、作らない。
作らない勇気
機能を追加するのは、誰でもできる。でも、機能を作らないと決めるには、勇気がいる。
Noと言う勇気を持て。
「あったら便利」を全部捨てる勇気を持て。
作らないことが、最高の意思決定だ。