「イノベーション人材を採用したい」
人事部が、こう言った。
その瞬間、私は思った。この会社は、イノベーションを理解していない。
ラベルを貼る愚かさ
「イノベーション人材」
この言葉を使った瞬間、何が起きるか?
組織が、2つに分かれる。
「イノベーションをする人」と「イノベーションをしない人」。
そして、多くの人が思う。「イノベーションは、あの人たちの仕事だ。自分には関係ない。」
これが、イノベーションを殺す。
イノベーションは、全員の仕事だ
イノベーションは、特別な人がやることではない。
エンジニアが、コードを1行改善する。それも、イノベーションだ。
カスタマーサポートが、ユーザーの痛みに気づく。それも、イノベーションだ。
経理が、無駄なプロセスを削る。それも、イノベーションだ。
イノベーションは、日々の小さな改善の積み重ねだ。特別な人だけがやることではない。
「イノベーション人材」がいる会社
ある大企業に、「イノベーション推進室」があった。
選ばれた10人が、そこに配属された。彼らのミッションは、「イノベーションを起こすこと」。
どうなったか?
他の社員は、こう思った。「イノベーションは、あの人たちの仕事だ。」
誰も改善提案をしなくなった。誰も新しいアイデアを出さなくなった。
そして、「イノベーション推進室」も、何も生まなかった。なぜなら、現場から離れていたから。
ラベルを貼ることで、組織全体のイノベーションを殺した。
Amazonには、「イノベーション人材」がいない
Amazonは、イノベーティブな企業だ。
でも、「イノベーション人材」というラベルはない。
代わりに、全員が「Day 1 mentality」を持つことを期待される。
毎日が初日。常に改善する。顧客のために、より良い方法を探す。
特別な人ではなく、全員がイノベーターだ。
必要なのは、こだわり
「イノベーション人材」という幻想を捨てたら、何を求めるべきか?
こだわり。
自分の仕事に、こだわりを持つ。「これでいいや」と妥協しない。「もっと良くできる」と考え続ける。
エンジニアが、コードの美しさにこだわる。
デザイナーが、1ピクセルにこだわる。
ライターが、1文字にこだわる。
このこだわりが、イノベーションを生む。
オーナーシップ
もう一つ必要なのは、オーナーシップだ。
「自分の会社だ」と思って働く。「誰かがやってくれる」ではなく、「自分がやる」と思う。
問題を見つけたら、指摘するだけではなく、解決する。
改善の余地を見つけたら、提案するだけではなく、実行する。
オーナーシップがある人は、ラベルなんて要らない。勝手にイノベーションを起こす。
Spotifyの文化
Spotifyには、「Squad」という小さなチームがある。
各Squadは、自律的に動く。承認を待たない。自分たちで判断し、実行する。
そこには、「イノベーション人材」というラベルはない。でも、全員がオーナーシップを持っている。
だから、イノベーションが生まれ続ける。
ラベルではなく、文化
「イノベーション人材」を求めるのをやめろ。
代わりに、文化を作れ。
こだわりを評価する文化。 妥協しない人を、褒める。
オーナーシップを評価する文化。 自ら動く人を、評価する。
改善を奨励する文化。 小さな改善も、大きく評価する。
失敗を許容する文化。 新しいことに挑戦して失敗した人を、責めない。
文化があれば、ラベルは要らない。
採用でも同じ
採用の時、「イノベーション人材」を求めるな。
代わりに、こう問え。
「この人は、自分の仕事にこだわりを持っているか?」
「この人は、オーナーシップを持っているか?」
「この人は、現状に満足せず、改善し続けるか?」
ラベルではなく、マインドセットを見ろ。
言葉は、現実を作る
「イノベーション人材」という言葉を使った瞬間、組織は分断される。
「やる人」と「やらない人」。「特別な人」と「普通の人」。
でも、本当は、全員がイノベーターであるべきだ。
言葉に気をつけろ。言葉は、現実を作る。
「イノベーション人材」という言葉を、捨てろ。
全員が、イノベーターだ。全員が、こだわりを持つ。全員が、オーナーシップを持つ。
ラベルではなく、文化を作れ。